紛争の内容
ご依頼者の方は、浪費により多額の借入金を短期間で費消し、使途不明金としてその内訳の説明が困難な状況でした。また、弁護士へ依頼する直前にクレジットカードの換金行為も行われていました。
これらの行為は、破産法上の免責不許可事由に該当する可能性が非常に高く、特に多額の使途不明金については裁判所から財産隠匿の疑いを持たれることが明白でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
破産申立てにあたり、財産隠匿の疑いを払拭し、免責不許可事由を克服することが最大の課題となりました。
使途不明金について一定の説明を可能とするため、ご依頼者の方と詳細かつ粘り強い打ち合わせを重ね、膨大な量の生活費、使途に関する資料を極めて細かく収集・作成しました。
さらに、ご家族の方からも詳細な聞き取りを行い、家計や浪費の実態を裏付ける資料を整備しました。また、依頼直前の換金行為については、その金額を財団に組み入れることで、破産管財人に納得いただく方針としました。
本事例の結末
当事務所において作成した詳細かつ膨大な使途の説明資料と、ご依頼者の方およびご家族の協力により、裁判所に対し、使途不明金が財産隠匿によるものではなく、浪費によるものであるという説明を一定の説得力を持って行うことができました。
その結果、裁判所は使途不明金に対する財産隠匿の疑いを解消し、換金行為についても財団への組み入れをもって破産管財人の理解を得ることができました。最終的に、無事に免責決定を得ることができました。
本事例に学ぶこと
自己破産申立てにおいて、特に浪費や使途不明金といった免責不許可事由に該当する事情がある場合、単に申し立てるだけでは免責を得ることは困難です。
裁判所が抱く疑念(本件では財産隠匿の疑い)を先回りして把握し、それを解消するための具体的な証拠と論理構成を示す徹底した準備が不可欠です。また、短期間での多額の浪費による使途不明金については、生活費など細かな支出であっても、可能な限り具体的な資料やご家族の証言など客観的な情報を積み重ねることによって、「申告が困難な使途不明金」ではなく「浪費の結果である支出」として再構成できることを実証した事案です。
そして、ご依頼者の方との綿密で根気のいる打ち合わせが、本件最大の成功要因です。ご依頼者の方に面倒な作業であっても協力していただくことで、困難な状況を打開することが可能となることを再認識いたしました。
さらに、依頼直前の換金行為のような免責不許可事由が明確な場合でも、問題の事実を正直に申告し、財団への組み入れなど適切な対処法を講じることによって、裁判所および破産管財人の理解を得て、免責を勝ち取ることができるという実務的な教訓を得ることができた事案です。
弁護士 遠藤 吏恭






