紛争の内容
破産者Aさんは、弁護士Bに依頼し、破産の申立てをしましたが、資料の提出などに遅延があり、裁判所からは多重債務に至った経緯や、財産の調査を目的として、当職が管財人が選任されることになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
管財人として当職が就いてから、まずはAさんの申立書やその添付資料を確認し、管財人による面談を行いました。

面談時にも揃っていない資料があったため、追って提出をお願いしましたが、破産手続開始決定後、申立書にも記載のないAさんに対する債権差押がなされていたことが発覚しました。

そこで、急遽管財人により差押債権者への調査を行いました。

調査の結果、差押債権者にはBから破産申立前から受任通知が出されていたことが分かり、差押債権者には当該債権差押の一部は否認権の対象になる旨指摘をし、任意に差押を受けた金員について返還してもらうことになりました。

本事例の結末
上記の返還金があった結果、本件は当初異時廃止が予定されていたところ、配当事案となり、債権者らには数パーセントの配当をすることができました。

Aさんの上記対応は、破産法252条1項1号(不当な破産財産価値減少行為)や同3号(不当な偏頗行為に、行為②については同8号(調査協力義務違反行為)に該当する可能性が考えられましたが、管財人よりAさん及びBに事情を確認し、いずれも意図的な対応ではなかったことが確認されたため、管財人としても免責不許可事由には該当しないとする意見を出し、裁判所もそれを認め、Aさんは無事免責決定を得ることができました。

本事例に学ぶこと
Aさんの対応は結果的に「免責不許可事由に該当しない」という判断がなされましたが、行為としては該当するということもありえ、またこのような行為がなく、申立書や資料に不足がなければ同時廃止事件となった可能性もあったと考えられます。

むろん、申立を急ぎしなければいけない案件で、資料等を十分に揃えられないケースもあるとは思いますが、破産手続においては初動も重要であり、申立書や資料に不足があり、事実関係も十分に整理されていないことにより、管財事件となってしまう可能性もあると感じました。

弁護士 相川 一ゑ