【依頼内容】

Iさんは、結婚3年目の専業主婦。
会社員の夫との間にまだお子さんはいません。

そんなIさんには、夫に話していない秘密がありました。
それは、総額400万円ほどの借金。
その大部分は結婚前に作ったもので、400万円のうち半分以上を大学時代の奨学金が占めていました。

Iさんは他県にお住まいでしたが、
「借金のことは絶対に夫に知られたくない。何とか秘密にしたまま破産できませんか」と、
遠方より電車を乗り継ぎ、夫と接点の全くない埼玉県の当事務所までお越しになったのでした。


【手続きの方針、結果】

Iさんの収入はゼロで、支払不能の状態にありましたので、破産を申し立てることにしました。

ただ、ここで少し問題になるのが、Iさんたっての希望である「夫には絶対に知られたくない」という点です。
当事務所では、ご家族に知られたくないというご依頼者様のため、そのような方に対しては事務所からの連絡方法を工夫するなど(例えば、郵便物を法律事務所名の入った封筒で送らないなど)の対応をしています。
また、破産申立の場合に、裁判所からの通知等が、代理人弁護士を飛び越して直接ご依頼者様の自宅に郵送されるということは原則としてありません。
しかし、破産開始決定が出ると官報に名前が載りますから、「100%秘密にできる」とは言い切れないのです。

そこで、Iさんにも、事務所としては秘密にするよう細心の注意を払うが、上記のような点もあるので絶対に秘密にできるとはお約束できない旨説明し、納得してもらったうえで受任し、破産を申し立てました。

Iさんの場合、申立直前に一部の債権者にまとまった金額の返済をしていたことが発覚して管財事件となりましたが、最後まで夫には知られずに破産免責を受けることができました。

こうしてIさんの希望は叶いましたが、借入のほとんどは奨学金であり、その他の債務も浪費などに基づくものではなく、私個人としては、何が何でも夫に内緒にしなければならないような性質の債務ではなかったように思います。
ただ、借金に関する受け止め方は人それぞれであるのもまた事実ですから、Iさんが夫に知られるのを恐れたその気持ちは十分理解できるものでもありました。