【依頼内容】

Zさんは、夫と離婚後、女手ひとつで3人のお子さんを育ててきました。
正社員ではありましたが、育ち盛りの子供を含む一家4人の生活は火の車で、急な出費があると生活費が足りなくなり、
その都度、カードローンに頼らざるを得ませんでした。
そこへ、3人のお子さんの高校進学、大学進学の時期が重なったため、
Zさんは学費に充てるために大口の借金も背負ってしまいました。
毎月の返済額が10万円以上になるに及んで、Zさんは事務所に相談に見えましたが、
実はZさんは7年数か月前に、一度自己破産を経験済みでした。


【手続きの方針、結果】

 Zさんは、正社員として勤務し、それなりの給与を得ていましたが、
まだ学生のお子さん3人を抱えつつ、これ以上債務の返済を継続することは不可能な状態にありましたので、
破産を選択するしかありませんでした。
 
 しかし、Zさんは過去に一度自己破産をしており、前回の破産免責が確定してから7年数か月しか経っていません。
 破産法では、前回の免責許可決定の確定日から7年以内に再度の免責を申し立てる場合には、原則として免責の対象外である(=再度借金をゼロにしてもらうことはできない)と定めています。
 Zさんは、7年数か月を経過しているため、上記の定めには直ちに該当しないとしても、
やはり、2度目の、しかも7年経過後比較的すぐの申し立てであることから、管財事件になる可能性が高く、
管財予納金として20万円を確保してもらいました。

 申し立て後、裁判所で行われる債務者審尋に呼ばれたZさんと私は、管財手続きになることを当然の前提として話が進むものと思っていました。
 ところが、担当裁判官は、着座されるなり、Zさんに対して、「大変な思いをされてきましたね」とおっしゃいました。
その時、裁判官が手元で見ていたのは、申立書に貼付した、Zさん直筆の陳述書でした。
それは、私が特別に指示したわけでもないのに、Zさんが自発的に、便箋数ページに渡って、一度目の破産後
再びここまで負債が膨らんだ経緯、その間の母子4人の努力や葛藤、
2度も裁判所にお世話になることへの申し訳なさ、債権者に対する謝罪の気持ち・・・等々をびっしりと綴ったものでした。

その甲斐あってか、裁判官はZさんに非常に同情的で、7年経過後わずかであるにもかかわらず、
簡易な同時廃止手続きで進められることになったのです。
 非常に早く2度目の免責決定が得られたことに関し、Zさんから感謝の言葉を頂戴しましたが、
私は、自らの借金問題と真摯に向き合ったZさんご本人の態度こそが、このような結果をもたらしたのだと思っています。