事案の概要
職場の人間関係等から精神に不調を来し、途絶えた収入の埋め合わせとして複数の携帯電話回線を契約し割賦払いの携帯電話端末を売却することで生活資金等を賄っていたが、その後、生活保護を受給するタイミングで破産手続申立てがなされたという事案について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容

生活保護を受給するにあたり財産調査がなされていたため、破産者の免責調査を行うことが主たる業務となりました。
破産者は返済の目途がないにもかかわらず、当座の生活資金等を得るため複数の携帯電話回線契約を行い、入手した携帯電話端末を廉価で売却するということを繰り返していたところ、これはいわゆるクレジットカードの現金化と同視できる状況であったため、免責不許可事由に該当するものと判断しました。

本事例の結末

破産者にはめぼしい財産は存在しなかったため、破産手続は異時廃止となりました。
免責手続きでは、破産者には免責不許可事由が存在すると判断するが、その原因には精神的不調の存在があり、現在は生活保護を受給しその限度で生活をしているという点を踏まえれば裁量免責が相当であるとの意見を述べました。
その後、裁判所から裁量免責相当との決定がなされました。

本事例に学ぶこと

キャッシングやクレジットカードの使用ができない場合でも既存の携帯電話回線契約を利用して新たな契約を締結することができることもあります。
携帯電話端末の中には換金性の高いものもあり、金策に利用されることも多いのですが、その実質はクレジットカードの現金化と変わりませんので、安易に行うべきではありません。

弁護士 吉田竜二