もう10年以上前のご依頼者のお話です。
依頼者は50歳前後の男性でした。
債務整理で破産方針の受任をしました。
最初に着手金を1万円いただき、残りの弁護士費用は分割でした。

通常、弁護士が受任通知を債権者に送ると依頼者への請求はストップします。請求が止まりますので、今まで債権者に支払っていたお金を弁護士費用に充てることができるのです。
また、受任通知を債権者に送ると、債権者から取引履歴が弁護士に送られてきます。
通常1か月~3か月位で債権者からの取引履歴は出揃い、弁護士は利息制限法に引き直し計算をしたり債権調査を行い、債権者一覧表の作成をしていきます。

本件は特に難しい事案ではなく、一般的な破産事件でした。
受任後2か月して、次の弁護士費用の分割が入金されなくて、会計担当から依頼者に督促の連絡をしてほしいと言われた頃、この男性の奥様から男性が亡くなったという電話がありました。自殺でした。
「グリーンリーフ法律事務所の弁護士●●先生にお父さんの借金のことはすべてお願いしているから心配しないように。」という書き置きと弁護士の名刺が置いてあったといいます。
これからどうしたらいいのか、と言われ、奥様と二十歳そこそこの娘さんが一緒に来所しました。
弁護士は、以下①~③のことをお話しました。
①ご依頼者が亡くなってしまったことで弁護士との委任契約は既に解除されていること。
そのため、代理人として借金の処理をできなくなってしまったことをご説明しました。
②弁護士費用はご主人から1万円しか受領していないので、受任通知書の発送や債権者への対応等で返還する弁護士費用はないこと。また、依頼者が亡くなったことによって、これから債権者に辞任通知を送ること。
③相続放棄の手続きについて。
おそらく辞任通知を受領した債権者は、相続人であるお二人に対し、請求をしてくることになるだろうということ。相続放棄をすることのメリットとデメリットと説明しています。

生きている間に破産手続きをして免責決定が確定されていれば借金は妻や娘に相続されることはありません。この場合は相続放棄の手続をしなければなりませんし、相続放棄がなされるまで債権者から奥様と娘さんに請求がいくことになってしまいます。破産事件がきちんと終了していればと思う事案でした。