紛争の内容
被相続人が自宅マンションや預金を残して亡くなりました。相続人となり得るのは、妻、父、及び次順位の弟でしたが、妻は精神疾患で入院中のため、自ら遺産を管理することができず、死亡の事実もまだ知らされていない状態でした。死亡を伝えれば病状が悪化するおそれがある一方、伝えた時点から相続税の申告期限が進み始めるため、親族は対応に苦慮していました。そこで、弟の申立てにより、家庭裁判所が当職を相続財産管理人に選任しました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職は、申立人側と面談して通帳等の引継ぎを受け、遺産を管理しました。並行して父と弟が相続放棄の手続を行いましたが、次順位の弟の受理までには時間を要し、その後に妻が単独相続人となることが確定しました。放棄の進み具合は、申立人側の代理人と連絡を取り合って確認しました。この間、妻の入院費の請求が当職に届きましたが、管理人の権限は保存行為等に限られるため、家庭裁判所に権限外行為許可を申し立てて対応しましたが、相続放棄の申述受理が完了しましたので、当職において支払うことはしませんでした。また、妻への連絡は、病状に配慮して病院を通じて書面で行い、妻が自ら財産を管理できる状態か、成年後見等の申立てが必要かを見極めました。
本事例の結末
その後、妻の体調が回復し、自ら財産を管理できることが確認できたため、自宅にて遺産一切を引き渡して受領書を受け取り、家庭裁判所に管理終了の報告をして業務を終えました。
本事例に学ぶこと
相続人がいても、入院等で遺産を管理できない場合には、相続財産管理人の制度を利用して遺産を保全することができます。管理人による支出には裁判所の許可が必要な場合があるため、権限の範囲を見極めることが大切です。また、相続人の病状と相続税の申告期限の双方に配慮しながら、医療機関と連携し、相続人が財産を受け取れる時期を見定めることが、円満な引継ぎにつながります。お困りの際は、早めに弁護士へご相談ください。
弁護士 村本 拓哉





