紛争の内容
依頼者は生活が苦しく、金融機関から生活費の借入れを行っていました。
ところが、心身の故障により働けなくなり、借金の返済をすることができなくなりました。
そこで、弊所に破産手続・免責許可手続のご依頼をされるに至りました。

交渉・調停・訴訟等の経過
借金の原因が生活苦にあること、借金の金額が大きくないこと、めぼしい財産が何もないこと、と言った理由から、破産管財人が就かない同時廃止事件として手続を進めて行くことができると思われました。

しかし、実は10年前に親が亡くなり、相続放棄の手続を知らず、遺産分割協議がなされていなかったために、亡親の不動産について法定相続分を保有していることが判明しました。

そこで、相続人全員の戸籍資料を取り寄せ、相続人が非常に多いこと、不動産の場所があまりにも不便な場所にあって換価価値など認めようもないこと、を丁寧に丁寧に説明し、破産管財人が就いてもどうにもならないことを上申しました。

本事例の結末
非常に丁寧な報告書・上申書を裁判所に提出したことが功を奏し、裁判所は同時廃止事件として処理することを認めてくれました。そして、無事免責許可決定を受けるに至りました。

本事例に学ぶこと
相続が発生した場合、「長男が全て継ぐから」などとそのままにし、遺産分割協議もしないし相続放棄もしなかったという方がしばしば見られます。

しかし、破産の場面となると、このような手続の問題がある場合、潜在的には財産を有しているとして破産管財人が法定相続分部分を換価しようとして相続人間で混乱を生じさせることになります。

本件では不動産が相続財産に含まれており、同時廃止としてもらうことは極めて難しい内容でした。しかし、丁寧に丁寧に価値がないことを客観的資料を多く付けて上申書を作成することで、管財事件にならなかった非常に例外的な事例となりました。

弁護士 平栗 丈嗣