紛争の内容
さいたま地方裁判所から、個人の方の破産管財人の要請を受け、破産管財人に就任しました。
破産手続を開始すること自体には問題がなかったため、破産手続開始決定がなされました。
破産者の体調が悪いという話を聞いており、管財人面談をどのように進めるかを考えていた矢先に、破産者がお亡くなりになられた旨の報告がありました。
死亡届の提出を受け、その後は、「破産者亡○○相続財産 破産管財人」として、もっぱら財産の換価・配当を担当することになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
亡き破産者には相続人がおりましたが、相続人は相続放棄し、法定相続人が存在しない状態になりました。
破産管財人としては、預貯金・保険・出資金・各種財産を換価し、100万円を超える金額になりました。
この点、仮に破産者が亡くなっていなければ、99万円までの財産は「自由財産」として破産者が手元に維持できるのですが、今回は相続財産を拡張するという制度はありませんので、その全額が換価対象となりました。
債務は大きかったので、相続する必要はないとして、相続人は相続放棄を選択されておりました。

なお、本件は、破産手続開始決定時の財産と、破産者死亡時の財産とで、若干の変動がありました。
具体的には、預金にいくつかの入金がありました。
管財人が処理すべきなのは、破産手続開始決定時の財産ですから、その後の入金の法的性格を分析し、余りの金額をどうするかという検討には骨を折りました。もっとも、管財人は方針を立て、理屈とともに裁判所に意見を伺いながら、間違いのないように適切に処理を進めて参りました。

財産を換価した後は、簡易配当手続を行いました。
簡易配当は、債権調査を実施し、債権額に対し按分して配当原資を配当する手続です。
配当率は債権額の3~4%という僅少なものでしたが、個人の破産手続ではその多くが無配当で終結することを考えますと、比較的珍しいケースでした。

本事例の結末
配当が完了し、手続は終結しました。
なお、破産者が存命であれば、免責調査を行いますが、亡くなってしまっているため、免責調査は行われません。

本事例に学ぶこと
本件は、破産者の死亡に関連する事案です。
破産者の死亡の時期により、異なります。
破産者の死亡が、破産手続開始決定前であれば、破産手続は申立できません。
その場合、相続財産となり、相続人がいなければ、相続財産管理人を選任して手続を行うことになります。
一方、破産者の死亡が、破産手続廃止後で免責許可決定がなされていれば、破産者の債務は免責された状態で相続が開始することになります。
今回の事例は、破産手続開始決定後で破産手続廃止前という段階での破産者の死亡でしたので、相続財産として破産管財人が換価等を行うことになりました。
比較的珍しいケースでしたので、お悩みの方がいらっしゃればお問合せください。

弁護士 時田 剛志