事案の概要

務めていた会社から独立し地盤調査を行う会社を立ち上げたが、従業員が相次いで退職したことにより業務が回らず新規受注が困難となり、別途、従業員の横領行為が発覚する等して事業の継続が困難となった、警察に相談をしたが取り合ってもらえず失意の中で廃業した、その後、残った債務については個人的に返済をしていたが、次第に立ち行かなくなった
という事案について破産管財人に選任されました。

負債状況

法人 20社・4500万程度
個人 8社・3000万程度(大半が保証債務)

主な管財業務の内容

法人については廃業から時間が経過していたため売掛金等はなく、帳簿上の貸付金や従業員の横領行為について回収可能性があるかを検討しました。
貸付金の相手方に連絡を取ろうと試みましたが、所在不明であり会社としての営業実態もないようでした。横領行為については具体的な内容に関する資料が残っておらず、いずれも回収は困難と判断しました。
代表者個人にめぼしい財産はなく、破産手続申立以前に自宅を任意売却していましたが銀行関与のもと行われたものであり特段の問題点は見出せませんでした。回収済みの過払い金が存在したため、それについては自由財産拡張の問題として処理しました。

本事例の結末

法人については財団形成がなされず初回の債権者集会で破産手続廃止となりました。
代表者については過払い金の一部が財団組入れとなりましたが、配当可能な程度に財団は形成されなかったため、法人と同時に破産手続廃止となりました。
代表者の負債は大半が法人の保証債務であり、その他も運転資金等であったため、借入れの原因において免責不許可事由は存在しないと判断し、その後、裁判所から免責許可決定が下されました。

本事例に学ぶこと

法人の財産を回収しようとする場合、その証明資料が残っているかが重要な要素となります。
資料が残っていなければ、どの程度の請求ができるのか、相手方が請求権の存在等について否定してきた場合どこまで争えるのかとの判断がつかず、結果として財団が形成できないということになります。
法人の最後の仕事が破産手続での処理とすれば、その場で債権者に対して十分な説明ができるよう可能な限り資料は残しておくことが理想的であるということになります。

弁護士 吉田 竜二