奨学金がある場合自己破産するとどうなるのか、連帯保証人への影響等について弁護士が解説します

毎月の奨学金の返済や、他の借入れの支払いが重くのしかかり、「これ以上は返済を続けられない」「生活が破綻しそうになっている」とお悩みではありませんか。

教育機会を広げるための奨学金制度ですが、社会に出てからの収入が思うように伸びなかったり、病気や失業、生活費の高騰などの予期せぬ事情が重なったりすることで、返済に苦しむ方が年々増加しています。

返済が厳しくなった際の解決策として「自己破産」という言葉が頭をよぎることもあるでしょう。しかし、「奨学金も自己破産で帳消しにできるのか」「親や親族に大きな迷惑がかかるのではないか」と不安になり、受任・相談へ踏み出せないケースも少なくありません。

本コラムでは、奨学金と自己破産をテーマに、奨学金を自己破産した場合の法的効果、連帯保証人・保証人へ及ぼす影響、家族へ迷惑をかけないための対処法、および救済制度について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。

自己破産とはどのような手続きか

自己破産とはどのような手続きか

自己破産とは、多額の債務によって支払不能の状態に陥ってしまった場合に、裁判所に申立てを行い、自由財産を除いた債務者の財産を換価して債権者に配当する代わりに、残りの全債務の支払義務を免除(免責)してもらうための法的手続きです。

債務整理の手続きには任意整理や個人再生などもありますが、すべての債務をゼロにして人生の再スタートを図ることができる制度が自己破産です。

奨学金も自己破産で免責(帳消し)になるのか

奨学金も自己破産で免責(帳消し)になるのか

結論から申し上げますと、奨学金の返済債務も、銀行のカードローンや消費者金融の借入れ、クレジットカードのキャッシング等と同様に、自己破産による「免責対象」となります。

破産法上、税金や健康保険料、養育費などの一部の債権は「非免責債権」(自己破産しても消えない債務)と定められていますが、奨学金は非免責債権には該当しません。

したがって、裁判所から免責許可決定を受け、それが確定すれば、奨学金の返済義務も法律上消滅することになります。

自己破産が認められるための法的要件

自己破産が認められるための法的要件

奨学金を含む債務について自己破産を申し立てる場合、裁判所に申立てを行えば誰でも無条件に借金が免除されるわけではありません。法律上の要件を満たす必要があります。

支払不能の状態であること

破産法第2条11項は、「支払不能」について、債務者が支払能力を欠くために、弁済期にある債務について一般的かつ継続的に弁済することができない状態と規定しています。

単に「今月の支払いが苦しい」という一時的な状態ではなく、債務者の資産・負債の額、収入・支出の状況、年齢、職業、信用等を総合的に考慮し、客観的に見て将来にわたって返済を継続することが不可能であると判断される必要があります。

奨学金の残高がそれほど高額でなくても、本人の収入が低く、生活費を差し引くと返済余力が全くないような状況であれば、支払不能と認められる可能性は十分にあります。

免責不許可事由がないこと

自己破産を申し立てても、破産法252条1項各号に定められた「免責不許可事由」が存在する場合、原則として免責が認められません。

【代表的な免責不許可事由】

  • 浪費やギャンブル、投機的行動によって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと
  • 債権者を害する目的で財産を隠したり、不当に安価で処分したこと
  • 特定の債権者だけに優先して返済を行ったこと(偏頗弁済)
  • 裁判所や破産管財人に対して虚偽の説明をしたこと

奨学金の利用自体は教育資金の調達という正当な目的であるため、奨学金のみが原因で免責不許可になることはまずありません。

しかし、奨学金に加えてクレジットカードの浪費やギャンブルによる借入れが重なっている場合などは注意が必要です。

もっとも、仮に免責不許可事由が存在する場合であっても、反省の態度を示し、手続きに誠実に協力することで、裁判所の判断により例外的に免責を許可する「裁量免責」(破産法252条2項)が認められるケースが非常に多くなっています。

奨学金を自己破産した場合の連帯保証人・保証人への重大な影響

奨学金を自己破産した場合の連帯保証人・保証人への重大な影響

奨学金の自己破産を検討するにあたり、最も注意しなければならず、多くの方が頭を悩ませるのが「連帯保証人・保証人への影響」です。

主債務者の免責は保証人には及ばない

破産法第253条2項には、「免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利に影響を及ぼさない」と明記されています。

つまり、自己破産手続きによって「主債務者(奨学金を借りた本人)」の返済義務が免除されたとしても、「保証人(連帯保証人)」の返済義務まで消滅するわけではありません。

主債務者が自己破産をすると、奨学金の機関は、未払いとなっている残債務の全額(一括返済)を連帯保証人や保証人に対して請求することになります。

人物保証(機関保証を利用していない)の場合

日本学生支援機構の奨学金手続きでは、申込時に「人的保証」か「機関保証」を選択します。

人的保証を選択している場合、通常は以下のような人物が設定されています。

  • 連帯保証人: 原則として父または母
  • 保証人: 原則として叔父・叔母・兄弟姉妹などの4親内親族

本人が自己破産を選択した場合、債権者から連帯保証人(父親や母親)へ連絡が行き、奨学金の残額が一括請求されます。連帯保証人が一括で支払えない場合、分割払いの交渉をするか、最悪の場合は連帯保証人自身も任意整理や自己破産などの債務整理を選択せざるを得なくなります。

また、連帯保証人が支払えない場合は、二次的に「保証人(叔父・叔母など)」へ請求が回ることになります。

連帯保証人と保証人の違い

「保証人」と「連帯保証人」には法律上の権利に大きな違いがあります。

  • 連帯保証人: 本人(主債務者)と同等の重い義務を負います。債権者から請求された際、「先に本人に請求してほしい(催告の抗弁権)」といった主張や「本人の財産を先に差し押さえてほしい(検索の抗弁権)」といった主張をすることができません。
  • 保証人(通常の保証人): 催告の抗弁権および検索の抗弁権を有しています。また、複数人の保証人がいる場合に債務を人数で割った分だけを負担すればよい「分別の利益」を有しています。

奨学金の制度上、親が「連帯保証人」、親族が「保証人」になっているケースが多いため、親に対しては全額の一括請求が直接向かうことになります。

機関保証を利用している場合

近年増えている「機関保証」(保証料を毎月支払うことで、専門の保証機関が保証人となる制度)を利用している場合、親や親族を連帯保証人に立てていません。

そのため、本人が自己破産を行っても、家族や親族に一括請求が行くことはありません。保証機関が「代位弁済(本人の代わりに一旦債務を返済すること)」を行い、その後、保証機関が本人の破産手続きの中で破産債権者として加わる形になります。

結果として、機関保証を利用していれば、家族や親族に直接的な金銭的迷惑をかけずに自己破産することが可能です。

保証人に迷惑をかけない・影響を最小限にするための対処法

保証人に迷惑をかけない・影響を最小限にするための対処法

人的保証で親や親族が連帯保証人になっている場合、どのように行動すべきでしょうか。隠れて手続きを進めることはトラブルの元となります。

事前に事実を伝えておく

弁護士に依頼して自己破産の手続きを開始すると、弁護士から債権者へ「受任通知」を発送します。この通知が届いた時点で、債権者は本人への請求をストップし、即座に連帯保証人へ請求を開始します。

連帯保証人に事前の相談や説明がないまま突然一括請求書の連絡が届いてしまうと、親族間で深刻な感情的対立や不信感が生じてしまいます。

そのため、受任通知を発送する前に、必ず連帯保証人に対して「自身の経済状況」「自己破産を選択せざるを得ない理由」「今後は連帯保証人に請求が行くこと」を包み隠さず説明し、理解を得ておくことが極めて重要です。

連帯保証人側の対応方法を一緒に検討する

連帯保証人へ一括請求がいった場合の対応として、以下の3つのパターンが考えられます。

  1. 連帯保証人が代わりに一括または分割で返済する
    連帯保証人(親など)に十分な資力がある場合、債権者と交渉し、分割払いの合意を結んで返済を引き継ぐ方法です。
  1. 連帯保証人も任意整理や個人再生を行う
    連帯保証人自身も一括返済や毎月の分割返済が難しいものの、マイホームなどの財産を守りたい場合は、連帯保証人自身が任意整理や個人再生を行う手続きを検討します。
  1. 主債務者と連帯保証人が同時に自己破産をする
    奨学金の額が大きく、連帯保証人自身も高齢で収入がない、あるいは他社の借入があって返済不可能な場合、親子で同時に自己破産を申し立てることも選択肢となります。同時に手続きを進めることで、弁護士費用の負担を抑えられるケースもあります。

奨学金の優先返済(偏頗弁済)は絶対にやってはいけない

連帯保証人である親に迷惑をかけたくない一心で、「自己破産を申し立てる前に、奨学金だけを親のお金や自分のなけなしの貯金で一括返済してしまおう」と考える方がいらっしゃいます。

しかし、このような行為は破産法上の「偏頗弁済(へんぱべんさい)」にあたり、固く禁止されています。

支払不能に陥った後に特定の債権者(奨学金だけ、親族への借金だけなど)に優先して弁済を行うと、債権者平等の原則に反することになり、破産管財人によってその返済行為を取り消されたり(否認権の行使)、最悪の場合は「免責不許可」となってすべての借金が残ってしまうリスクがあります。

自己判断での優先返済は絶対にやめてください。

自己破産による生活へのメリットとデメリット

自己破産による生活へのメリットとデメリット

奨学金を含めて自己破産を行う場合、今後の生活にどのような影響が出るのかを正確に把握しておくことが大切です。

自己破産のメリット

  • 奨学金を含むすべての債務の支払義務が免除される
    免責許可決定が確定すれば、奨学金だけでなく、カードローンやクレジットカード等の支払義務がなくなります。
  • 債権者からの直接的な督促・取立てが止まる
    弁護士に依頼すると、各債権者に受任通知が送付され、本人への直接の連絡や督促が停止します。
  • 収入を生活の再建・将来のために使えるようになる
    毎月追われていた返済がなくなり、手元に残る収入を日々の生活費や再スタートのための蓄えに回すことができます。

自己破産のデメリットと誤解

  • 信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリスト)
    自己破産をすると、信用情報機関に破産情報が登録されます(およそ5年〜7年間)。その間は、新たな借入れ、クレジットカードの新規発行、住宅ローンや自動車ローンの契約が難しくなります。
  • 一定の財産が処分・換価される
    原則として99万円を超える現金や、一定の価値がある不動産・自動車・生命保険解約返戻金などは、破産管財人によって換価され、債権者への配当に充てられます。ただし、生活に必要な家財道具や一定の範囲の自由財産は手元に残せます。
  • 官報に住所・氏名が掲載される
    国が発行する機関紙である「官報」に破産者の情報が掲載されます。ただし、一般の人が日常的に官報をチェックすることは稀であるため、近所や知人に知られる可能性は高くありません。
  • 手続き期間中、一定の職業資格が制限される
    手続き中(開始決定から免責確定まで)は、弁護士、公認会計士、税理士などの士業や、警備員、保険外交員などの一定の職業に就くことが制限されます。免責が確定すれば制限は解除されます。

まとめ

まとめ
  • 奨学金は自己破産の対象となる債務であり、裁判所の免責許可決定を得られれば返済義務は消滅する。
  • 本人が自己破産しても、連帯保証人(親)や保証人(親族)の返済義務は消えないため、債権者から残債務の一括請求が行く。
  • 機関保証を利用している場合は、親族に請求がいかないため、家族に迷惑をかけずに自己破産が可能である。
  • 連帯保証人がついている場合、勝手な偏頗弁済(奨学金だけの優先返済)は絶対に行わず、事前に家族と話し合い、弁護士と方針を練ることが不可欠である。
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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 椎名慧

債務整理

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和7年登録後、自己破産、個人再生、任意整理など多数の債務整理案件に対応。丁寧なヒアリングによって依頼者に最も適した手続を選択する。債務整理の依頼者が抱える心理的な負担を最小限に抑え、一日も早く平穏な生活を取り戻せるよう、親身かつスピーディーな法的支援に注力している。