紛争の内容
過去に弊所で法人破産の申立てを受任したA株式会社がありました。

A社の破産手続は、珍しいことに、届出のあった全ての借金(劣後的破産債権を含む)について返済(満額配当)して無事に終了しました。

この際に、①預金200万円が余りました。

しかしながら、その後、②ある債権者から「一部の債権を破産手続の際に届け出るのを忘れていた」と、その借金の連帯保証人に対して100万円程度の支払請求がありました。

困った連帯保証人の方は、余ったA社の預金(①)から、請求を受けている借金(②)の支払いをしてもらえないかと思い、弊所にご相談されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
会社が破産手続に入ると、その会社は「解散」したことになります。

通常は、破産手続終了によって法人格も無くなり、会社は消滅するのですが、今回のケースのように残余財産がある場合には、この財産を処理する「清算」の必要性が出てきます。

ちなみに、②の借金ですが、法人破産の場合は個人の破産手続と違って、免責の手続がありません。

したがって、破産手続が終了したからといって、債務が無くなる(免責される)という効果はありません。清算会社としてのA社は②の債務を負っている状態と言えます。

そこで、本件では、A社の会社清算の手続を受任することになりました。

清算人の選任、残余財産(①)の回収、「債権申出の催告」の官報公告などによる債権者の確定等を経て、最終的に①の預貯金から②の借金を弁済することができました。

本事例の結末
全ての手続を終え、無事にA社について清算結了登記をすることができました。
これによりA社の法人格は消滅したことになります。

本事例に学ぶこと
今回のケースは、先行する破産手続が満額配当で終了した上、残余財産があった(しかも債権の申告漏れもあった)という極めて珍しいものでしたが、例えば破産手続後に新しい財産が見つかった場合には、同様に清算手続きが必要になる可能性があります。

会社を完全に畳むためには意外なハードルが存在する場合もあるということで本件をご紹介いたします。

弁護士 榎本 誉
弁護士 吉田 竜二
弁護士 木村 綾菜