紛争の内容(事案の概要)

本件は、経営していた法人の連帯保証人となっていた代表者個人(無職・負債総額:約2億2800万円)の破産管財事件です。 個人の負債の約97%は法人債務の保証に起因するものでした。個人管財人の役割は、自己破産に至った経緯や隠し財産の有無を厳格に調査し、債務の返済義務を免除(免責)してもよいかを裁判所に報告することです。多額の負債を抱えた個人の経済的再生を適正に支援するため、迅速な調査が求められました。

交渉・調停・訴訟等の経過(管財人としての活動)

就任後直ちに調査を開始し、2月に破産者本人との管財人面談を実施しました。 管財人は、破産手続開始決定が下された時点の財産状況を正確に把握するため、預貯金の申告漏れがないかを細かくチェックするとともに、随時転送されてくる郵便物の内容を入念に確認しました。 さらに、現在の暮らしぶりについても詳細なヒアリングを行いました。破産者本人は、認知症を患い足が弱っている父親の介護に日々携わっており、タバコや酒、ギャンブルといった遊興費の支出は一切なく、極めて質素で真面目な生活を送っている事実を確認しました。この真摯な調査により、財産隠匿などの不誠実な行為(免責不許可事由)は一切存在しないことを解明し、破産財団として20万円を収集・管理しました

本事例の結末

管財人としての迅速かつ綿密な生活・財産調査の結果、免責を不許可にすべき事由はないと明確に判断し、裁判所へ調査報告書を提出しました。その結果、4月に開催された第1回の財産状況報告集会において無事に「異時廃止」となり、集会1回のみで円滑に手続きを終え、免責許可決定(借金の免除)へと導くことができました

本事例に学ぶこと(管財人としての所感)

会社の倒産に伴い、代表者個人が多額の連帯保証債務を背負って自己破産を申し立てるケースは少なくありません。管財人としては、財産の申告漏れがないかを厳格に調査する一方で、面談を通じて破産者の現在の生活実態(本件におけるご家族の介護など)を真摯に汲み取ることも極めて重要です。客観的な調査と人間味のある事実確認を両立させ、迅速に手続きを進めることで、1回の集会で破産者のリスタートを円滑に後押しできた有意義な事案でした。

弁護士 時田 剛志