紛争の内容
奨学金、クレジットカード利用、自動車ローン、キャッシング等で約950万円の負債を有する破産者について、裁判所から破産管財人に選任され、負債の免責をして良いかの調査を行うこととなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
破産者との面談の結果、以下のような事実関係を把握しました。
ネットショッピング、冷蔵庫等の買い物にカードを利用し、さらに、ローンを組んで、自動車を400万円で購入した。

その後、自動車を売却し、その残債が100万円程度残り、この残債務の返済と、新たな自動車の購入代金として約350万円を払うために、約570万円の負債を形成した。さらに、バイナリーオプションという投資を始め、カードやキャッシングを利用して、投資の資金を用意したが、半年程度で約300万円の損失が生じた。
バイナリーオプションを始める前から、99万円程度の負債が存在したが、その原因は交際相手と同棲を始めるタイミングで、初期費用と家具の代金を支払ったことや、飲み会で後輩のために飲食代を支払ったこと等であった。

これらの事情によれば、破産者は、浪費及び射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、及び、過大な債務を負担したと言えるため、破産法252条1項4号の免責不許可事由が存在しました。

本事例の結末
もっとも、現在は、借金をしたり、財産を著しく減少させる行為を行っておらず、家計簿を見ると、十分な収入を得て貯蓄を行う生活態度が確認できました。そのため、破産者の経済的な再出発のために、破産法252条2項に基づく裁量免責を認めるのが適当であるという意見を裁判所に提出しました。そして、裁判所において破産者の免責を許可する旨の決定を行いました。

本事例に学ぶこと
免責不許可事由が存在したとしても、破産者の経済的な再出発のために、免責不許可事由の具体的内容が悪質でない限りは、現在の家計全体の状況を考慮して、破産法252条2項に基づく裁量免責を認める方向で検討するのが望ましいです。本件についても、そのような態度で免責調査を行いました。

弁護士 村本 拓哉