紛争の内容
破産者(依頼者)は、もともと浪費癖があったところ、借金を重ね、さらに安易な一攫千金を夢見て、インターネット上でのオンラインカジノやFX(外国為替証拠金取引)といった投機的な行為に依存し、多額の負債を抱えるに至りました。
これらの行為は自己破産における最も重い免責不許可事由(浪費および投機行為)に該当するため、免責を認めるかどうかの調査と判断を行うべく、当職が破産管財人に選任されました。
交渉・調停・訴訟等の経過
管財人である当職は、まず破産者の過去の銀行口座取引履歴を調査し、オンラインカジノへの送金記録やFXの取引記録から、負債の発生と増加の真の原因を特定しました。
その上で、破産者に対して「免責不許可事由」の重大性を指摘し、二度とギャンブルや投機を行わないことを誓約させるとともに、生活態度の抜本的な改善を求めました。
破産者からは、反省文、家計収支表の提出、およびオンラインカジノサイトからの退会証明といった更生に向けた具体的な証拠を得て、その誠実な姿勢を確認しました。
本事例の結末
破産管財人として当職は、破産者が免責不許可事由に該当する行為を行ったことを認めつつも、その後の手続きにおいて真摯な反省を示し、管財人の指導に全面的に従ったことで更生の可能性が十分に見込まれると判断しました。
その旨を裁判所に報告し、裁量による免責許可が相当である旨の意見書を提出しました。
この意見に基づき、裁判所は「免責許可決定」を下しました。
本事例に学ぶこと
オンラインカジノやFXによる投機的な負債は、原則として免責が認められない重大な免責不許可事由です。
しかし、破産管財人が選任された管財事件において、破産者が過去の過ちを深く反省し、指導の下で生活を改善する意欲を明確に示すことで、裁判所の裁量によって免責を得られる道は開かれています。
重要なのは、事実を隠さず、管財人の指導に真摯に応じ、二度と同じ過ちを繰り返さない姿勢を示すことです。
弁護士 申 景秀






