紛争の内容
ご依頼者様は、個人事業主として風俗経営されていました。しかし、コロナ禍の影響で売上が大幅に減少し、事業継続のために運転資金をカードで借り入れしたが、経営状況は改善しませんでした。
そのような苦しい状況下で、店舗が盗難被害に遭い、手元の現金を失ってしまいます。この盗難が決定打となり、資金繰りが完全に不可能となり、事業の継続を断念せざるを得なくなりました。残った多額の借入金の返済もできず、当事務所にご相談に来られました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職は、ご依頼者様から事業の財務状況、コロナ禍による具体的な売上減少のデータ、そして盗難被害の経緯を詳細にヒアリングしました。その上で、自己破産が法的に認められた再スタートのための制度であることをご説明し、手続きの見通しを具体的にお示ししました。
ご依頼後、事業資産の整理が必要なため、裁判所が破産管財人を選任する「管財事件」として自己破産の申立てを行いました。申立書には、経営破綻に至った経緯として、コロナ禍の影響を示す売上データや、盗難の客観的な証拠等を添付しました。
破産管財人との面談には当職も同席し、ご依頼者様が事実関係を正確かつ落ち着いて説明できるようサポートを続けました。
本事例の結末
破産管財人は、当職が提出した客観的証拠と、ご依頼者様の反省態度を考慮し、「免責を許可することが相当」との意見を裁判所に提出しました。
この意見に基づき、裁判所は「免責許可決定」を下しました。これにより、ご依頼者様は事業に関する借入金を含めた全ての支払義務から解放されました。
本事例に学ぶこと
コロナ禍の影響や不測の犯罪被害など、経営者の努力だけでは避けられない要因で事業が行き詰まることがあります。多額の負債を抱え、一人で思い悩んでいる場合でも、自己破産という法的な手続きを通じて人生を再建することは可能です。早めに弁護士に相談することが、解決への最も確実な一歩となります。
弁護士 申 景秀