事案の概要
従前、職人として働いていたが時期により収入が不安定となりその補填として借入れを行っていた、その後、加齢とともに体を壊してしまったため、生活保護の受給を開始するのと並行して自己破産手続の申立てを行ったという事案について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容
本人は老人ホームに入所している状態であったため申立準備が不十分であると判断され、財産関係調査の補充等が主たる管財業務の内容となりました。

ホームに赴き本人の様子を確認したところ、認知能力に問題はないが自力で移動することが難しいという状況でした。

財産としては預金口座、遺産分割未了の実家があるとされていたのですが、預金口座については銀行に照会をかけ、実家については査定を取得しつつ他の相続人に事情を確認することとしました。

預金口座については銀行から取引なしとの回答がなされました。

実家についてはその立地からある程度の価値が見込めることが判明しましたが、他の相続人から破産者は被相続人の生前に多額の金銭援助を受けていたとの指摘が出ました。

金銭援助の内容について確認をしたところ実家の査定価値と同程度に上るということであり、破産者もそれ自体は間違いないということを認めていましたので、検討の結果、実家については破産者の実質的な相続分は存在しないとして放棄の処理をすることとしました。

本事例の結末
実家については債権者集会において放棄の処理が認められ、その他、破産者にめぼしい財産は存在しなかったため、破産手続は異時廃止となりました。

免責手続きに関して、今回の破産原因は生活費の不足にあると判断されたため免責不許可事由不該当の意見を述べたところ、後日、裁判所から免責許可決定が下されました。

本事例に学ぶこと
破産者の健康状況等により準備が万全でない状態で破産手続の申立てをせざるを得ないことがあります。

その場合、裁判所としては申立書に記載のある財産関係が正しいものかという判断のために破産管財人を選任するという方向で考えることになりますので、真にやむを得ないという場合でない限りしっかりと準備をした上で破産手続の申立てを行うことをお勧めいたします。

弁護士 吉田 竜二