紛争の内容

Aさんは、数年前、中古住宅を1,500万円で購入し、家族とともに移り住みました。
ところが、その住宅には多数の建築瑕疵があり、売主との間で瑕疵担保責任を争う紛争となりましたが、平穏に住み続けることができないため、Aさん一家は新たにアパートを借りてそこに転居せざるを得ませんでした。
これにより、Aさんは、住宅ローンとアパート家賃をダブルで支払わなければならず、これら居住費が家計を圧迫して生活費が不足するようになってしまいました。
そこで、不足した生活費を補うために、カード会社のキャッシングを利用したところ、あっという間に利息が膨らんで、400万円弱にまで達してしまいました。
中古住宅の売主との紛争も遅々として解決せず、見切りをつけたAさんは、まずは自分達一家の生活を立て直すため、住宅ローンを含めた負債を整理することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過

Aさんには毎月安定した収入がありましたが、住宅ローンを含む月々の返済額は大きく、また、中古住宅については「はっきり言って、もう要らない」と言い切っていましたので、迷わず破産を選択しました。
弁護士に依頼したことで、住宅ローンを含む全ての返済が止まり、精神的にある程度楽になった状態で、弁護士費用の分割払いや家計簿の作成、その他書類の準備に注力していただき、破産申立てを行いました。
本件の中古住宅は建築瑕疵のある物件でしたが、裁判所から選任された管財人の尽力によって何とか売却・換価することができ、抵当権者への弁済に回すことができました。

本事例の結末

Aさんは、無事免責され、住宅ローンを含む全ての債務をゼロにすることができました。

本事例に学ぶこと

購入した住宅に建築瑕疵があったがために、Aさんは重い居住費の負担を余儀なくされ、生活費のための借金も負ってしまったという、誰が見ても同情的な事案でした。
瑕疵のある住宅ですから、売却も困難であることが予想され、売れずに残ってしまった場合は、破産手続が終了した後も、Aさん自身が金融機関との間で任意売却を進めていかなければならない・・・という事態も十分にあり得ました。
Aさんとしては、「嫌な思い出に結び付いているこの家を手放したい」と希望していましたから、全ての事情を知ったうえで、それでも買い受けてくれる方が現れたのは、本当に幸いなことでした。

弁護士 田中 智美