紛争の内容

退職金のほとんどをギャンブルに費やしたため、その後の借財について個人再生を利用しようとしたが、体調不良による継続的就業の困難などから、自己破産(管財事件)に切り替えた事例

交渉・調停・訴訟などの経過

① 受任当時は、娘家族と暮らす年金受給者、配偶者は給与所得者。
② 早期退職割増の退職金1000万円超を生活費とギャンブル(パチンコ。多い月は月額38万円に上る)に費やす。
③ その後、クレジットカードの利用、さらなる借り増し。 
④ 依頼者は、年金収入が、配偶者には給与所得があり、娘夫婦と同居し、住居費などの負担が軽い。よって、個人再生を選択する。
⑤ しかし、依頼者は、メンタル疾患の治療、再発の繰り返しによる、度重なる転職により、年金以外の収入が安定しない。よって、個人再生方針を変更し、破産申立に切り替え、免責調査型管財事件に備え、管財予納金(20万円)の積み立てを行う。
⑤ 体調の安定による再就職による給与収入と年金を合わせ、個人再生に再度方針を変更。
⑥ メンタル疾患の悪化により、退職。年金収入のみ(夫婦とも)となり、さらに、娘夫婦の賃借物件の定期建物賃貸借であることから更新がなく、退去、同居の継続がかなわず、別世帯物件を賃借せざるを得なくなり、返済に回す余裕を失った
⑦ 再度、自己破産に方針変更。管財事件となる。

本事例の結末

裁判所の裁量により免責許可。

本事例に学ぶこと

年金受給者夫婦であっても、家計に余裕があれば、個人再生手続きの利用が可能であるところ、住居費の負担が軽減できず、個人再生手続きの利用がかなわなかった事例。
依頼者(債務者)の体調の変化による、収入の不安定から、債務整理手続きが終わるまで時間を要することは仕方がないが、依頼者が、家族の協力を得て、根気強く頑張ってくれると、債務整理の目的を達することが可能となり、経済的更生を遂げられる。

弁護士 榎本誉