自己破産するにあたって車を手元に残せるのかという問題があります。車の価値が高いか、車のローンが残っているか等、手元に残しやすい場合とそうでない場合がありますので、今回はこの点について紹介いたします。また、自動車を手元に超したい場合にしてはいけないことも説明します。

車の価値によって手元に残せるかが決まる。

20万円以下の場合

さいたま地方裁判所の場合、価値が20万円以下の車に関しては、破産者の財産として手元に残すことができるという運用がなされています。自由財産拡張という方法によって手元に残すという運用です。同じく、自動車保険についても手元に超すという運用がなされています。

自動車の評価は、一定の年式の車であれば無価値と評価できる場合もありますし、そうでない場合は中古車業者の簡易査定によって評価する場合もあります。

なお、破産をする場合、手元に残せる財産の総額は99万円が原則ですので、手元に残したい預金等と合計して99万円を超える場合は、破産手続き開始決定後に得た給与や親族からの贈与金等から、超過分の現金を破産管財人に支払う必要があります(財団組み入れと言います)。

20万円以上の場合

車は破産管財人が売却するのが原則です。破産管財人は,破産手続開始決定後、速やかに自動車等の鍵等を破産者から引き継ぎ,処分見込額が100万円を超える自動車等を売却するときは裁判所へ自動車等の売却許可申立書を提出し,売却と同時に車検証の使用者及び所有者欄の名義変更手続を行います。

もっとも、破産者所有の自動車等に20万円を超える価値があるが,破産者の生活の状況等を考慮すると破産手続開始後も破産者が使用することが相当であると認められる場合であれば車を手元に残せる可能性があります。自由財産拡張によって手元に残すという方法です。

自動車の価値は中古車業者の簡易査定によって評価することがあり得ます。

また、この場合も、手元に超せる財産の合計は99万円が原則というルールが適用されますので、99万円を超える場合は超過分の財団組み入れが必要になります。

自由財産拡張について

破産開始決定が確定してから1か月以内に申し立てをするというルールがありますが、この期間内に申し立てをしなければ、拡張ができなくなるというわけではありません。

車のローンが残っている場合

車にローンが残っている場合、車のローンだけを返済することは、破産をする場合は許されませんので、手元に超すためには親族の人に返済をしてもらう等により、債務をなくす必要があります。

債務をなくすことができない場合は、車検証上の所有者が誰であるかを確認する必要もありますが、ローン会社が車検証上の所有者である場合は、車の引き上げに応じる必要があります。

自動車を手元に残すためにしてはいけないこと

直前の譲渡

破産の申立てをする直前に家族に自動車を譲渡することをされる方がいますが、こうした場合、破産管財人が自動車の取戻し・換価を行う可能性がありますので、控えて頂いた方が良いです。

また、破産法第252条1項1号が、財産を減少させる行為を免責不許可事由として定めており、自動車の譲渡によって破産による債務の免責が認められなくなる可能性があります。自動車のために破産ができなくなってしまっては元も子もありませんので、この意味でも譲渡は控えて頂いた方がよろしいかと思います。

上記の通り、自由財産拡張によって手元に残せる可能性がありますので、譲渡はお控えください。

車のローンの返済

破産をする場合、一部の債権者に返済をすることは許されません。そのため、車のローンだけ返済を続けることはお控えください。
特に、弁済期が到来していない車のローンを返済して、ローンを消してしまおうとすると、破産法第252条1項3号の免責不許可事由に該当する可能性があり、この場合、破産による債務の免責が受けられなくなる可能性があります。

自動車を手放さなければならない場合

破産の申立てを準備している際に、上記のようなルールに照らすと車を手放さなければならなくなりそうであるという場合、20万円以下の自動車を購入する等して、破産法のルールに従っても手元に残しておけそうな車を入手するという方法で、破産手続き開始後の交通手段を確保する方法もあります。

そのため、上記の直前の譲渡やローンの返済等の、免責が得られなくなる可能性のあるような危険な行為はせずに、このような方法で交通手段を確保する方法も検討して頂くべきかと思います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉
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