紛争の内容
1 購入した住宅の任意売却の決済トラブル
2021年に、都内に夫婦でローン(借入総額7000万円弱)購入した都内一戸建て住宅の売買の決済間近になって、売買契約締結の交渉を担当していた夫が、埼玉県内の自宅を出て行ったまま、戻ってこず、また、仲介の不動産会社の担当者も困っている、今後どうしたらよいかとの電話相談から始まりました。
事情を伺いますと、夫は、親族の連帯保証人となっており、その連帯保証債務の支払いを求める民事裁判で敗訴し、相当額の負債を負っていたこと、また、コンサルの派遣の仕事をしていたが、その報酬支払いについてもトラブルがあったこと、夫婦の住宅ローンの支払は夫に任せていたこと、夫が住宅ローン支払いの負担も困難となり、夫の説明によれば、任意に売却することにより、住宅ローンの残債は賄えるはずだという説明でした。
これを信じて、妻は、夫の方針に従い、また、夫に不動産の売却は任せていたのでした。
夫が行方不明となったことで、不動産仲介会社から事情を伺ったところ、第一順位の抵当権を有する債権者の分は本件売買代金で賄えるが、第二順位の抵当権者への支払については、夫が別途工面する話なっていたとのことで、それが決済直前の時期になっても、具体的な説明をいただけないまま、夫と連絡がつかなくなったとのことでした。
2 自己破産申立の依頼
すると、相談者には、2000万円未満ではありますが、住宅ローンの残債務が残ります。住宅を失うのに、残ローンを支払うことはかなわず、自己破産を選択し、その依頼を受け、代理人に就任しました。
各債権者(これには不動産の買主も含まれます)に、受任通知を発しました。
3 不動産売買の合意解約
各債権者に受任通知を発して間もなく、本件不動産の仲介会社から問い合わせがありました。
本件不動産売買は決済できないことが判明したため、仲介会社は買主に事情を説明し、本件売買を合意解約し、仲介会社が預かっていた手付金を買主に返還することになるが、それを行ってよいかというものでした。
破産必至の経済的破綻状態となり、破産申立を弁護士に依頼し、弁護士が債務者は支払いを停止するという受任通知を発した後には、債権者を平等に取り扱う、つまり、債権者の偏頗不公平な対応をしないことが原則となります。
この問合せは、買主に、仲介業者に債務者が預けた手付金を債権者である買主に返還するという、他の債権者に比して優遇する扱い、偏頗弁済となるものでした。すると、破産管財人が否認権を行使し、その返還を請求する可能性がありました。
そもそも、この手付金は、夫との共有不動産の売買の手付金であり、その手付金額はその持分によって所有者に帰属しています。また、不動産会社も、夫とは連絡が取れていない状況ですから、本件不動産売買の合意解約が可能かは問題のあるところですが、決済がかなわず、買主は本件住宅の完全な所有権を取得しえない以上、本件売買を解消して、買主が支払った手付金は買主に返還されるのが便宜であり、全額のうち、債務者である妻の持分(受領分)だけは返還しないという対応もあり得るでしょうが、本件では、手付金全額を買主に返還するのが便宜であることは明らかであり、また、それが実質的に公平であると考え、依頼者には、合意解約に応じ、手付金(持分相当額)返還を行いました。
ただ、本件破産手続において、破産管財人から対応がありうることは申し添えました。
4 夫の所在判明
依頼者は、最寄りの警察署に夫の捜索願を届け出ていましたところ、関西以西に居ることが判明し、現地まで迎えに行ったとのことでした。
夫の方は、勤務先を無断欠勤とし、それも相当期間に及びましたので、住宅ローン債務以外にも、相当額の連帯保証債務を負っている夫も債務整理することが必要と認められました。
ご夫婦同時に申立てをする場合には、資料が共通する部分が多いことから、当事務所では、ご夫婦がそれぞれ破産もう立てせざるを得ない事態になっている場合には、弁護士費用の軽減の措置が受けられることから、検討されたいとご説明しました。
夫に確認したところ、落ち着いてから考えたいとのことで、同時申立てのご依頼はありませんでした。
5 20万円以上の価値のある自家用車の対応
依頼者は、相当額の評価額が見込める自家用車を保有していました。
住まいの関係などから自動車の利用を継続したいという希望がありましたので、この自動車について複数査定を取り、そのうちの高額な方で親族に購入してもらい、その車両の登録名義を親族に変更後、その車両を貸与してもらうこととなりました。
売却に当たっては、有償でしたが自動車査定協会の査定額を調査し、その査定額を上回る金額で売却し、依頼者は、その売却金を得るともに、名義変更の済んだ車両の貸与を受けました。
また、その売買代金で、分割払いとしていた弁護士費用の残金を一括支払いし、管財予納金20万円も賄うことができました。
6 都内の不動産の競売
都内に保有しておりました住宅は担保物競売が開始され、破産申立前が競売手続の開札期日でした。
任意売却時の金額以上では売却されませんでした。
本事例の結末
依頼者の積極的な協力、誠実な対応もあって、順調に申立がかないました。
自由財産の拡張も認められました。
弁護士依頼後の、手付金返還の件については、管財人は、破産者の持分と返金の事情、改修の手続等を総合的に考慮され、結果、同返金については、否認権行使の対照としないと判断しました。
破産手続は異時廃止で終了しました。
そして、めでたく、裁判所より、残った多額の住宅ローン債務の支払い義務を免除する旨の免責許可が出ました。
本事例に学ぶこと
依頼者は、夫婦のペアローンであった住宅ローンの支払いを夫任せにし、任意売却の手続をとる1年前以上から、住宅ローンの支払が滞っていたことを知りました。
夫は、支払いの督促の通知を妻に見せないように隠していたようでした。
夫任せにしていて、その支払いに対する関心がなかったことを反省しました。
当事務所では、ご相談者がどのような事情で支払い不能に陥ったのか、その後の対応について、的確なアドバイスができるものと自負しております。
堅実に就業しつつも、結果、過大な債務を負った原因を深く認識し、それを繰り返さないとの決意をもって、再出発する方の自己破産申立てについては、的確なアドバイスないし指導をもって、破産申立、免責許可に導くことができることを自負しております。
まずは、お電話での債務整理相談をお受けください。
弁護士 榎本 誉






