紛争の内容
1 依頼者は、平成14年に、浪費が原因で個人再生手続をとったことがある方です。
2 配偶者とともに、学習塾を経営し、自宅で学習塾を行うことを機に、依頼者自身は集団指導の塾として、配偶者は個別指導塾として、それぞれ自営し、それぞれが確定申告してきました。
3 そのための設備投資などで、それぞれが金融機関から多額の借入を行いました。
4 コロナウィルス過においては、対面指導が極めて困難となり、オンライン授業に切り替えますが、受講者は減る一方でした。
5 債務整理を依頼するにあたり、集団指導の塾は廃業し、依頼者は、配偶者の個別指導の手伝いをすることもありますが、年金が主な生活の資本となりました。
6 到底支払うことはかないませんので、債務整理の方針は破産申立以外にありませんでした。自営業廃業してからの破産事件ですので、破産管財事件となることは想定済みです。
7 配偶者の個別指導塾経営も、極めて厳しく、こちらの債務整理も検討しましたが、住宅ローン付き自宅の評価額を踏まえると、清算価値が莫大で、満額返済となることが見込まれましたので、特に、債務整理を行わないという方針でした。
同居する夫婦、ご家族でしたので、家計の状況のつけ方には、配慮してもらい、配偶者の個別指導塾の経理と、家計の状況を分別して明確に記入作成しるようお願いしました。
8 弁護士費用、破産管財の予納金(20万円)の準備のために、余裕のない家計からねん出してもらうため、申立てまで1年以上かかりました。
本事例の結末
申立準備を整え、管財予納金の工面が整い、申し立てを行いました。
破産手続開始決定を受けての、破産管財人との面談において、配偶者との、自宅での学習塾開業時の、什器備品の所在、現在に使用状況についての確認がなされました。
自宅での開業資金のために借り入れた什器備品類は、減価償却の手続は取らず、その購入時にその取得額全額を経費として計上して、申告していたため、手元に残っている確定申告書には探索の手掛かりとなる記載がありませんでした。
個別指導塾で使用している什器備品の内、開業当初に、依頼者が購入した物品の有無を確認してもらいましたが、結局、開業に際して設置した看板くらいしかないことが判明しました。
管財人は、同看板を経済的価値なしとして、財団から放棄しました。
破産手続は、費用不足による異時廃止となりました。
破産者は、過去の個人再生手続を利用する原因となった浪費の生活は当然に改善されておりましたので、借入金等の使途に特に問題はなく、当然ながら、免責不許可事由はないとして、裁判所からは免責を許可する決定がなされました。
本事例に学ぶこと
依頼者は、配偶者とともに、学習塾を行っていましたが、依頼者は集団指導塾、配偶者は個別指導塾として、それぞれが売り上げ、経費を別にして、それぞれが確定申告していることから、依頼者の集団指導塾を廃業し、配偶者の個別指導塾を継続するということについて、破産管財人、破産裁判所から特に問題視されることはありませんでした。
これが、ご夫婦共同経営だった場合、会計が分別されていない場合には、その点の説明にどんなにか苦労したかと思います。
当事務所では、個人の自営業者の形態に応じた債務整理の相談に応じ、それぞれの場合に応じた、最適な債務整理方法をご案内し、的確なアドバイス、破産申立てができることを自負しております。
弁護士 榎本 誉






