紛争の内容

1 依頼者は、出身地でアルバイトしていたころのカード利用により、ギターを分割で購入したのが初めてのカード利用とことです。

2 うつ病の悪化、膝の靭帯断裂などの大けがなどでの転職の繰り返し

依頼者は、18歳のころから、鬱を患っていたとのことで、土木工事会社に勤務していましたが、前から患っていたうつ病が悪化しました。

また、所属していた草野球チームでの練習中に、膝の靭帯を断裂するけがを負いました。

精密機械メーカーに転職したそうですが、やはり、鬱が悪化し、2年足らずで、退職したそうです。

その後は、看護助手として、市内の病院に勤務していましたが、やはり、1年足らずで、退職したそうです。これも鬱の悪化とのことです。

3 関東の求人広告を見て、埼玉県内の市町村に転居

依頼者は、そのような疾患を抱えていましたが、関東の求人広告を見て、埼玉県内の病院に転職しました。
その引っ越し費用のほとんどをクレジットカードの利用で用立てたとのことです。

そして、病院に勤務しながら、介護福祉士の資格取得の研修を受けることにしました。
この資格を取得すると、賃金の増額が図かれたとのことです。

そして、このカリキュラムをこなし、試験に合格すると、研修費が免除されるというものでしたので、非常に魅力でした。

しかし、依頼者は、鬱の悪化が重なり、結局、カリキュラムをこなすことができませんでした。

カリキュラムをこなし、資格取得をすれば、研修費の返済免除を受けられたそうですが、残念ながら、資格取得がかないませんでしたので、研修費の支払いを求められることになりました。

また、鬱が悪化して働けず、病院の勤務を辞めることにもなったとのことです。

4 生活保護申請、受給開始

依頼者は、生活保護を申請し、受給が開始されました。

借入金などの支払は全くできませんので、法テラスに債務整理相談をすることになりましたが、相談枠がいっぱいですぐに相談を受けることはできませんでした。

弁護士会の多重債務電話相談の案内を受け、改めて、電話相談をし、改めて、法テラスを通じた法律扶助を受け、今回破産申立てをすることになりました。

本事例の結末

体調は相変わらず、すぐれず、申立準備も芳しくありませんでした。

裁判所には、依頼者の体調不良の状況などを説明する報告書を裁判所に提出し、これ以上の資料追加は当分の間困難であることを説明しました。

裁判所は、このような債務者の状況を斟酌し、提出した資料と依頼者から聴取した事情の陳述書のみで、本債務者に破産手続開始決定を出しました(同時廃止)。

破産者の借入金の使途は明朗であり、疾患の回復がなされないことによる、就業困難による返済資金の枯渇は債務者の病状などを鑑みるとやむを得ないものとする申立人の意見も考慮していただき、免責不許可事由はないとして、免責を許可する決定がなされました。

本事例に学ぶこと

依頼者は、長く患っている疾患がありつつも、通院治療を受けながら、仕事に就くことを努力していました。

しかし、遠く離れた地から、埼玉県に引っ越しても、やはり、体調はすぐれず、また、資格取得の努力も実りませんでした。

仕事につき、資格を取得し、より多くの収入を得、返済をしたいと希望される誠実な方も、体調回復しなければ、満足に仕事すらできません。そのような方のために、福祉があります。

生活保護費は、税金を原資としておりますから、返済に充てることはできません。よって、それほど高額でなくとも、返済は不可能として、破産手続をとるほかありません。

当事務所では、債務を抱えながら、生活保護を受給するに至った方の自己破産申立てについても、十分な経験を積んでおり、的確なアドバイス、破産申立ができることを自負しております。

弁護士 榎本 誉